猫のエリザベスカラー1

エリザベスカラーは、

あまり体を掻いてほしくない時によく使用されます.

しかし、動物の健康に害を及ぼす可能性もあるという、意見もあります.

それは一体どういうことでしょう.

エリザベスカラーについて長所と短所について考察した論文を参考に、

まとめてみます。

 

エリザベスカラーは、猫の患者の自己外傷や過度の手入れを防ぐために使用される、

薬を使わない安価で安全な手法です。

例えば動物は縫合糸を取り除き、特に体、手足、尾の手術部位に

さらなる外傷を与える傾向があります。

また、皮膚科の問題による掻痒感は、

自己外傷および状態の悪化につながる可能性があります。

エリザベスカラーは、

皮膚の病変を治癒させ、傷を修復し、追加の手術の必要性を防ぐことができるので、

とても役立ちますので

上記の状況で治療の一部として、

ほぼ必ずの着用と言っていいでしょう。

 

猫のエリザベスカラー適用

  • 局所薬または治療器具の除去の防止
  • かゆみや不安による身だしなみや自己外傷の予防 
  • 手術後の縫合糸除去の防止
  • 治癒を促進するための創傷の保護
  • カテーテル、ドレッシングまたは包帯の保護 

f:id:pixy122000:20220405185410p:plainf:id:pixy122000:20220405185418p:plain楽天市場より】

エリザベスカラーもさまざまな形があるそうです.

一般的なプラスチックのものや(左)、クッション型(右)のようなユニークのもの.

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http://blog.tarumioasis.com/?eid=1196

お金がかからない、即席エリザベスカラーとしてカップ麺を利用する例も.

 

続く

マイクロチップ装着に関する新制度チラシが来ました2

マイクロチップは、

直径約2mm、長さ約812mmの円筒形の

ガラスのカプセルで包まれた電子標識器具です。

ペットの小さな「迷子札」のようなもの、とよく宣伝していますが、

受信発信機能はありませんし、

音が鳴ったりすることはありませんので、

直接的に「迷子」をなんとかしてくれる道具ではありません。

電池が入っていません(入る必要がない)ので、

途中で器具を交換する必要はありません。

 

それぞれのチップには、

世界で唯一の15桁の数字(番号)が記録されており、

この番号を専用のリーダー(読取器)で読みとることができます。

microchip1.jpg

microchip2.jpg

https://www.pref.chiba.lg.jp/index.html 千葉県HP参照

この読取器は保健所や動物愛護センター、動物病院(任意)に置いてあります。

読取器は市販では売っていませんが、

動物医療系の資材搬入業者から購入することができます。

保健所では動物を保護した場合、

必ずこれを使ってマイクロチップの有無を確認しています。

登録番号がわかれば、飼い主にたどり着くことができます。

 

体に入れる方法ですが、

犬猫の場合、頸部の皮下に獣医師が専用の注射器を用いて埋込みます。

麻酔や事前検査は必要ありません。

老若オスメス関係はありません。

首輪などと違って脱落する心配がなく、

安全性の高い個体識別の方法とされています。

マイクロチップは入れた場所は首の後ろ、背部から動かないと言われています。が、背中から前後、胸の横や前に移動している子も

そこそこいると経験的に思っています。

 

マイクロチップを入れたら、病院から登録に必要な書類を渡されますので

登録に必要な費用を振り込み、

指定登録機関である公益社団法人日本獣医師会

オンライン又は郵送にて申請して完了です。

 

個人的には、マイクロップは入れることに肯定的です。

マイクロチップだけでなく、

読取器がなくても、その猫が人の庇護下にある猫であるという

アピールをするために

首輪もセットでつけることをお勧めします。

犬と違い、猫は「野良」がいます。

保護してもらうためには、ペットであることを認識してもらう必要があります。

迷子だけでなく、

震災をはじめとした予期せぬ災害時にはその真価を発揮してくれることを

期待しています。

 

 

マイクロチップ装着に関する新制度チラシが来ました

令和4年(2022年)6月から

マイクロチップ装着が義務化されます。

 

詳しい内容は

ペットショップやブリーダーなどの犬や猫を販売する「事業者」には、

令和46月以降に取得した犬、猫へのマイクロチップの装着が義務化されました。

つまり

ペットショップやブリーダーで購入された犬猫にはマイクロチップが必ず入っている、ということになります。

そして、

・「動物を購入したオーナー」は、環境省のデータベースに情報登録する義務、

までの一連の流れが制度です。

 

さらに

①既存の飼育されている犬猫に対し、

・飼い主によるマイクロチップの装着は「努力」義務となります。

マイクロチップが装着された犬猫を購入したり譲り受けた場合

30日以内に飼い主情報を変更すること(変更登録)が義務。

・住所や電話番号等、登録内容を変更した場合は30日以内に届け出る義務。
・犬猫が死亡した場合も届出。

となります。

 

令和4年6月1日以降に装着されたマイクロチップは、「犬と猫のマイクロチップ情報登録」という環境省のデータベースに登録されることになります。

 

今まではマイクロチップの情報は下記の登録団体(民間)に登録していました。

 

これらの既存のマイクロチップの情報をオーナー様の希望で

環境省へ移すことを推奨されています。

 

マイクロチップの意義として

「突然の迷子や災害時などに対する確実な身元証明」

としての有用性を言っています。(環境省より)

迷子や災害などで飼い主と離ればなれになっても、

脱落のないマイクロチップを装着することで、

飼い主の元に戻ってくる可能性が高くなるといいます。

 

続く

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法獣医学3

動物を虐待する人は

子供時代に何かネガティブな経験をしていることが

あると言います。

自分が当事者、例えば家庭内暴力の被害者であったり、

自分以外の人への暴力や動物虐待を目撃するといった

経験があると、

将来動物を虐待する可能性が高まるというデータがあります。

 

動物虐待の理由はいろいろあります。

好奇心、探究心

興奮する

傷つけたいという衝動

嗜虐性

など様々な動機が言われています。

中でも一番多いのは

暴力、攻撃による虐待です。

動物虐待をする人の70%は他の暴力犯罪を犯していると言います。

このように

動物虐待は子供や女性への暴力、家庭内暴力といった

社会的な暴力につながりがあり、

動物は人社会の福祉の指標と一つとしての役割があることが

見直されてきています。

海外には、子供や女性の保護施設があるように

動物を守る施設が増えつつあるそうです。

 

獣医師としてこの問題の役割は

虐待の犯人を見つけることではありません。

疑わしい案件に対して、

身体診察、レントゲン、死亡解剖など

証拠を採取し、カルテに記載、保存し、

引き継ぐべき機関(警察をはじめとした法執行機関)に

引き継ぐことです。

 

そのためには疑わしき案件を見つける知識と

実際起きた時のプロトコールを準備しておくことが

重要だと考えます。

日本は海外に比べて、

動物福祉全体の意識水準はあまり高くありません。

動物の関係性は人の社会密接しているということは

疑わざる事実です。

理想としては、

獣医師と医師、心理学者、ソーシャルワーカーして公共機関が

連携して問題に向う体制を整えることではないでしょうか。

 

終わり

 

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法獣医学2

動物虐待を把握することがなぜ大切なのでしょうか。

動物愛護の観点から重要なのはもちろんですが、

それだけではありません。

 

動物虐待は家庭内暴力および社会的暴力のつながりとも

密接に関係してことが明らかになってきました。

 

警視庁のまとめでは

動物愛護法違反(虐待・遺棄など)で摘発される事件は増加傾向で、

20年は102件に上り、

人への暴力行為の予兆になっているとも言われています。

また、

動物は人の健康状態と福祉の指標としての役割を

果たしていると言われています。

動物を不当に扱ったり、虐待する人間は

子供や老人など自分の周囲の弱い立場の人間に対しても

同様の行動を示すことがあるそうです。

さらに殺人で有罪判決を受けた人間は、

動物虐待の経歴を持っていることが多いというデータもあります。

 

つまり

獣医師が動物虐待を発見することは

家庭内暴力児童虐待についての可能性を疑う、または発見する

きっかけになるかもしれないのです。

 

殴る、

揺さぶる、

投げる、

毒を守る、

火傷を負わせる、

熱湯をかける、

首を絞める、

窒息させるなど

様々な形の虐待があります。

繰り返される虐待による骨折や

軟部組織や臓器の損傷もあります。

 

それらが事故(偶発的傷害)ではなく

動物への虐待行為を立証するには、

獣医学的検知からの情報提供が

必須なのです。

 

続く

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法獣医学

法獣医学という言葉を知っていますか。

人の法医学はご存知の方も多いはず。

行うことは人ではなく、動物であるということは

想像に難くないはずです。

しかしその目的や行う理由は人のそれと少し違います。

 

動物の不審な怪我や死をに対し、

なぜそのようになったのか、

どのようにしてそうなったのか、

それが人による虐待なのかを

調べることが法獣医学です。

 

先にお話しした動物愛護法の改正の一つに、

「虐待されていると疑われた動物を発見した場合、

報告することが義務化」されました。

それまでは努力義務でした。

近年、動物の虐待に対する問題が社会的に

重大な意味があるという認識が広がってきたということでしょう。

 

そもそも動物虐待とは

「ある個体に傷害を及ぼす意図的な行為」と定義でき、

世界中で問題となっています。

動物たちに多大な苦痛を与えているにもかかわらず、

「動物虐待」というテーマは研究テーマとしては

注目を浴びることがあまりない分野でした。

メディアでは時々、動物虐待を取り上げたニュースや特集を目にしますが、

実際どの程度動物の虐待が行われているか、わかっていません。

その理由は

獣医師が動物の虐待を認識しいにくい、

ということがあります。

なぜなら大学の獣医学課程において、

虐待による「意図的な傷害」についてどんなものなのか、

学んでいないことも一因と言えるでしょう。

さらに、たとえ虐待を疑う患者がいたとしても、

本当にそうなのか、違うかもしれないと思うと通報を躊躇ってしまうことが

要因として挙げられます。

 

日本では2020年に「日本法獣医学研究会」が立ち上がりました。

これは獣医大学の職員や公務員獣医師、民間の獣医師、刑法の学者によって

創設されました。

団体の目的は、動物虐待に対する研究を深めると共に、

教育の方にも力を入れ、

将来獣医師になる人が大学を卒業したときには、

動物が虐待をうけているかをわかるようになっているようにすることだそうです。

 

続く

 

 

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法獣医学 | 法獣医学研究会 | 日本 HPより

 

 

 

猫のあれこれ4

純血種にはそれぞれ起こりやすい問題を持っていることが多いです。

それは独特な特徴が故に、であることもあります。

 

いわゆる「鼻ぺちゃ」と言われる短頭種という種類は

鼻ぺちゃであるが故に起こる問題があります。

それを「短頭種症候群」と言います。

まず短頭種がどのような猫がいるか思い出して見ましょう。

ペルシャ

・ヒマラヤン

・エキゾチックショートヘア

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以上が有名な猫の短頭種です。

 

ところで犬にも短頭種はいます。

フレンチブルドッグがもそのひとつです。

彼らにも同じように短頭種症候群があります。

彼らを近くで見たことがある人は

「ズーズー」とか「ガーガー」とか

いびきのような呼吸音をしているイメージありませんか。

彼らは

緊張や興奮、暑熱環境で頻呼吸やチアノーゼを生じやすいです。

大きないびきなどの睡眠呼吸障害もよく伴い、

病状が悪化すると運動不耐性、努力呼吸、失神など

重度な上気道閉塞症状を示します。

 

猫も全く同じではありませんが、犬も猫も鼻ペチャであるがゆえに

鼻腔狭窄という状態になりやすいです。

 

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https://www.konekono-heya.com/byouki/kankakuki/nose/bikuu-kyousaku.html

 

それが故に、

犬では上記の症状、猫では下記のような症状が見られます

  • の穴が狭まっている
  • 普段から鼻をグーグーならす
  • 鼻水をよく飛ばす
  • 呼吸が荒くなる
  • 呼吸困難に伴うチアノーゼ(酸素不足)
  • 熱中症にかかりやすい

 

骨格的な問題として

「不正咬合」と言って歯の噛み合わせが良くない状態になりやすい。

鼻が短いが故に

自分で自分のグルーミングが十分にできない。

 

以上のように

短頭種というのは、

飼育するには色々と飼い主のケアやメンテナンスが

必要な種類ということがわかります。

 

よく見た目の独特なかわいらしさや

見た目のメリットのみを説明する方がいます。

もし、短頭種の猫ちゃんと巡り会った時は

デメリットも併せて理解し、

メンテナンス(時間と手間)をかける余裕と根気をもつ

覚悟を持って飼育していただきたいと思う種類です。