難産5

難産と診断された場合,

治療法を決める一つのポイントは

胎児の心拍数です。

 

心拍数がある程度安定していれば(200/分程度),

薬などを使った内科処置を試す余裕がありますが,

胎児の心拍が低いと胎児が弱っている指標であり,

一刻の猶予もありませんので,

帝王切開という緊急手術になることが多いです。

 

もし胎児が元気で,かつ

姿勢や大きさの問題で出産が妨げられていないのであれば,

内科的治療を試みます。

陣痛が弱かったり,子宮無気力症という子宮が胎児を押し出す力がない場合が多いです。

 

フェザーリングという方法は,

産道に指を入れて刺激します。

これは陣痛を促すホルモンの分泌を促すことができます。

このホルモンをオキシトシンと言います。

 

このオキシトシンを注射で投与する方法もあります。

 

母体は低カルシウム血症になっていると言いました。

オキシトシンの分泌にカルシウムが関わっています。

ですので,注射によってカルシウムが投与されることで

分娩を促す治療法もあります。

 

このようにお腹を開かず内科的に治療する方法で分娩できる確率は

2030%と言われています。

これでダメなら外科的手法に進みます。

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難産4

正常な分娩から外れた時,

動物病院に運ばれます。

 

病院では,超音波(エコー)検査で胎児の状態を把握します。

具体的には心臓の動きを見ます。

正常で元気な胎児なら心臓の動き(心拍数)は200回以上です。

この状態であれば余裕があるのですが,

150回程度を下回る場合は,

すぐに胎児を取り上げる必要が出てきます。

心拍数が130回を下回る場合は

胎児の無事もかなり危ぶまれている状況と考えます。

 

加えて

Xray(レントゲン)にて

胎児の位置や体勢,大きさに問題がないか把握します。

胎児と母体が元気でも,

物理的に胎児が骨盤の穴を通れる状況でない場合は,

即座に帝王切開に切り替えます。

 

母体は分娩時に

脱水,低血糖,低カルシウム血症になることが

多いです。

それが原因で正常な分娩が妨げられていることもあります。

ですので病院では,

血液検査でそれを把握すると主に,

点滴でカルシウムや糖を補給します。

 

難産の原因は

母体側75%,胎児側25%と言われています。

薬などお腹を開かず解決できるのは

2530%程度なので,

難産になると

78割は外科的な処置は必要になるということです。

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難産3

難産の原因

難産の原因は母体,胎児と共に可能性があります。

 

・赤ちゃんが大きすぎる

赤ちゃんの数が12頭と少ないと、

一頭の大きさが大きいために、

難産の可能性が高くなります。

特に頭が大きすぎると,骨盤の穴を通れず,

外に出ることが物理的に難しくなります。

 

・陣痛の遅れ,子宮が十分に収縮できない

母体の栄養状態やホルモン分泌が関係してきます。

 

・胎児に姿勢が悪い

胎児の上下だけでなく,

胎児の姿勢も悪いと難産の原因になります。

 

・すでにお腹の中で死亡してしまっている

 

などがあります。

 

この他にも、一部の猫種は難産の確率が高かったり、

お母さんが太りすぎ、痩せすぎ、

運動不足、高齢、初産、神経質なども

難産のリスクが高くなります。

 

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難産2

もし、

愛猫に妊娠した可能性がある場合どうしたら良いでしょう?

まず、とりあえず動物病院を受診しましょう。

動物病院では触って妊娠しているかどうかを診断します(触診)。

 

触診は交配後20日頃から可能となるので、

その時期を目安に受診するとよいでしょう。

 

超音波検査では、胎子の心臓の動きをチェックします(交配後19日頃~).

 

レントゲン検査では、胎子数を正確に診断することができます(交配後50日頃~).

分娩まで定期的に病院を受診し、胎児が正常に成長しているか、母体に健やかかをチェックしてもらいましょう.

 

 

妊娠期間中の猫の状態の変化の特徴を説明します。

 

妊娠20日頃

乳首がピンク色になり、張りがみられるようになります。

1週間程度、食欲が落ちることもあります。

 

 妊娠30日頃

お腹や乳房が大きく膨らみ、見た目が大きく変化します。

 

妊娠40日頃

活動量の減少し食欲が増し、体重も増える時期です。

攻撃的になる場合もあります。

 

妊娠50日頃

お腹の中にいる子猫たちが活発になり、

胎動を感じ始められる時期となります。

 

妊娠60日頃

いよいよ出産が近いです。

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難産

難産とは、

異常分娩のうち、外からのの介助がないと分娩が困難または不可能な状態を

難産と言います.

獣医領の中では、緊急を要するものの一つで、

適切に素早い対処をしないと母子共に命に関わる救急疾患です.

 

まず正常な分娩の基礎知識から

猫の妊娠期間は

63日前後です.

一回の分娩で1−8頭程度生まれます.

早産と言われるのは妊娠期間58日以前に生まれた場合です.

予定より5日程度(妊娠期間58日)であれば、

生存率に影響はそれほどありません.

1週間以上早いと(妊娠期間〜55日)だと

生きられる確率は極端に低下します.

 

全て順調に妊娠、出産できればいいのですが、

何か異常がある場合(後述;難産の原因)は

対処のタイミングが非常に大切です.

 

早すぎる帝王切開は、

・未熟児が生まれるリスクが高い

胎盤が剥がれにくく、出血リスクが高い

・母乳が出ないため新生児が育てない

逆に遅すぎる分娩のリスクは

・胎児死亡の可能性がかなり上がること

・母体の負荷が大きく、命の危険性が高まる

 

ですので

飼い主はよく観察し、

異常を感じたらすぐに病院に相談する

判断力が必要となります.

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発作(痙攣発作)5

では痙攣発作の治療方法の話をします。

 

脳の構造に異常があった場合や

脳以外に異常があった場合は、

その原因に対する治療を行います。

 

例えば頭蓋内に原因があった場合、

脳腫瘍であれば摘出手術・化学療法剤・放射線治療などを検討するでしょう。
脳炎であれば抗生物質ステロイド剤や免疫抑制剤を使って原因を治しつつ、

抗痙攣薬・脳圧降下剤を使って痙攣発作を起こしにくくします。

つまり薬(内科療法)を使うでしょう。

血液の異常による痙攣発作の場合、

異常を補正しつつ、

原因の特定、治療を行います。

 

では、脳の興奮が原因となる

特発性てんかんはどうでしょう。

原因がわからないてんかん発作は、

発作を根本的に直すことはできません。

ですので、

発作そのものを抑えるための、

てんかん薬を飲み続ける

内科療法が主体となります。

 

まとめると

特発性てんかんの場合は、

根本的治療は現在の医学には存在せず、

薬で発作を抑えるという

対症的治療が中心となります。

 

それ以外の痙攣発作は

可能不可能はありますが、

原因がありますので、

それに対するアプローチが

治療の基本となります。

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発作(痙攣発作)4

ではまず痙攣の原因、診断の手順や考え方をご紹介します。

 

先に述べたように痙攣の原因は大きく分けて

脳炎、脳腫瘍といった脳に関する疾患と

心疾患や低血糖電解質異常、高アンモニウム血症など

脳以外の疾患です。

 

脳の原因を特定のためには

MRI検査や脳脊髄液検査が必要です。

普通の病院にある検査方法では

診断することはほとんどできません。

原因が見つけられない「特発性」てんかん発作は

若齢の犬やヒトでは一般的ですが、

猫では脳の構造に異常多いため、

原因特定のために

MRI検査や脳脊髄液検査を勧められることが多いです。

 

脳ではなく全身状態の異常を見つけるために

血液検査をはじめとした院内でできる検査で

原因を調べることができます。

 

脳の原因を特定するためには

特殊な機材(特定の場所への移動や金銭負担など)と

猫への負担(全身麻酔など)、

大きな負担がかかります。

ですので

まずは猫に負担のない、

手軽な血液検査などから行い、

脳以外の異常がないか確認しながら

原因を調べることが

スタンダードな方針だと言えます。

 

続く

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